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六章・賭け試合の末に⑤

 何日も寝ない夜が続いた。鏡を見たらきっと見る影もない自分の姿が写るのだろう。月明かりが窓から部屋を照らしていた。 (あとはここにルーナディアの花弁の汁と種を入れて……よし、完成だ)  すでに何通りを試したかもわからない。オライオンにも嫌というほどに試飲してもらっている。ほんのりと青く染まっている薬の入った瓶を月明かりに照らしてみた。ルーナディアの残りはもうない。この薬が駄目なら、もう一度ブルビエガレ森林へ出向くことも考えなければならない。 (なにが足りないんだ?)  ゆらゆらと瓶の中で揺れる半透明の青い液体。雲間から満月が顔を出し、月光が薬へと注がれる。その瞬間だった。ほんのりと薬が発光し、青色が紫へと変化した。ルキノの釣り上がり気味のアーモンドアイが丸く見開かれる。発光を続けている薬を見つめながら、エリクサーが完成したのだと確信めいた勘が告げていた。  ルーナディアは新月と共に開花する。そして種を生み次の日には枯れてしまう。そしてルーナディアによって生成されるエリクサーは月明かりを取り込むことで完成した。 (とても不思議で美しい薬草だ……これがエリクサーの真の姿だったんだな)  星空の中に浮かぶ満月を見つめながら笑みをこぼした。じんわりと広がっていく感動は、明日にはもっと大きなものへと変化しているのだろう。  けれど今は一人で薬の完成を噛み締めたい。 (オライオンようやく君を治すことができる)  もう一度薬を揺らすと、ちゃぷんっと軽快な音を立てる。それが楽しくて「フフッ」と笑みがこぼれた。

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