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第10話

「市場は賑わっていますね。品数も豊富で人で溢れていますね」 「でも三日前までは閑散としていて人の姿はほとんどありませんでした」 「そうですか。なぜ、国内から品物が届かないのですか?」 「アルさまが何度も陳情書を出しているんですが、返事が来たことはありません。砂漠地帯か、魔物が棲むと噂の死の森か、どちらかを越えてこなければこの北の砦にはたどり着きませんから、ですから皆さん危険をおかしてまで来ようとは思わないだと思います。利益に見合わないので。でも最近は週に一回、ミラー湖で取れた新鮮な魚介類をメイソン村の行商人が届けてくれて、すごく助かっています。セドさまにお礼を言うのをすっかり忘れてしまいました」 「殿下にちゃんと伝わっていますよ」 「そうだといいんですけど」 何気に後ろをみるとゼオリクさんの姿がなかった。 「ゼオリクは甘いものに目がないんですよ。そのうち戻ってきますよ。私一人でもサクさまはお守りできますから安心してください」 その時はそうなんだとさほど気にもとめなかった。 「サクさま」 女の子が花を持って駆けてきた。 「庭に咲いたの」 「そう。きれいなお花をありがとう」 女の子と同じ目の高さまで腰を下ろし笑顔で受け取った。すると、 「サクさま」 市場の人たちがにこにこしながら次から次に集まってきて、あっという間に人だかりが出来てしまった。 「イギア帝国の皇子さまと結婚したって聞いたよ。もう水くさいんだから。早く教えてよ」 「私たちの生活を守るために結婚したって聞いたよ。何もサクさまが犠牲になることはないのに」 「そうだよ。国王さまが食糧を私たちに分けてくれればこんなことにはならなかったのに」 ごほんとスフォルさんが咳払いをした。

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