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第11話

「あら、いい男だね。見ない顔だけど」 「サクさまの護衛をさせていただいていますスフォル・デューク・ヒューベルトでございます」 「デューク・ヒューベルトって、あんた、もしかしてイギア帝国の公爵さまかい?」 「良くご存じですね。私ではなく父が当主ですが」 にっこりと微笑むスフォルさん。やっぱりただ者じゃなかった。公爵家は王族に連なる者や、それに匹敵する大貴族のことを指す言葉だ。なんで苗字を聞くのを忘れたんだろう。失礼なことをやらかしてないか冷や汗が出た。 「観光船が沈没したときに娘夫婦と孫を助けてもらったと公爵さまがわざわざ礼を言いに来て下さったんだよ。珍しいお菓子をたくさんもらったんだ」 「そうですか。誤解があるようですので私の方から説明します。セドリック殿下がサクさまを見初められましてそれで結婚を申し込んだのです。ですから政略結婚ではありません」 「そうなのかい」 みんながおめでとうとお祝いをしてくれた。恥ずかしくて耳まで真っ赤にしていると、 「ぼくも、おはなあげたい」 小さな男の子が人混みを分けて駆けてきた。石畳のちょっとした段差に躓いて転んでしまった。わぁーっと泣き出した男の子にすぐに駆け寄り、 「大丈夫だよ」 脇の下に手を入れて体を起こすとそのまま抱き上げた。 「ちちんぷいぷい痛いの、痛いの、飛んでけ」 「なぁ~~に?」 「早く良くなるおまじないだよ。お花ありがとうね」 「うん」男の子が涙を手の甲で拭きながら笑ってくれた。 「やはり違うな」 スフォルさんがボソリと呟いた。何が?と聞き返そうとしたら、ゼオリクさんがスフォルさんの隣に立っていたから心臓が止まるんじゃないか、そのくらいびっくりした。

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