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第12話

男の子は無事にお母さんと会うことが出来た。迷子にならなくて良かった。お花をもらったお礼に擦りむいた膝が早く良くなりますようにと祈りをこめた。 「僕もサクと一緒に町に行きたかった」 城に戻るとアルさまがかなりご機嫌斜めになっていた。 「セバスチャンさんたちとの打合せは無事に終わりましたか?」 「終わったよ。兄上がまた訳の分からないことを言ってきた。城の修繕をさせないつもりか」 「殿下、詳しく教えてもらってもいいですか?私どもは帝国の人間ですが、今はサクさまの護衛です」 「二人がサクを守ってくれるから安心して仕事が出来るし、二人のことは信用している。怒らないと約束をしてくれますか?」 「はい。善処します」 「約束する」 「あ、そうだ。茶をお持ちしますね」 ぼおっとして突っ立っている場合じゃない。 ドアを開けようとしたらひとりでに空いて家令のセバスチャンさんが焼き菓子とティーポットとカップが乗ったワゴンを押して執務室に入ってきた。セバスチャンさんは年の頃六十才近く。アルさまのお側にずっと仕えてきた。 「セバスチャンさんすみません」 「サクさまもお疲れでしょうに。町はどうでしたか?」 「市場には品物がところ狭しと並べてあって、活気に溢れていました」 「それはようございました。皆さま、お茶の時間です。遠慮せずにお座りください。サクさまもです」

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