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第13話

「帝国からもらった結納金を全部寄越せば不問にするだと?」 陛下からの書状に不快感を露にするスフォルさん。 「サクのことは国は預かり知らぬ。野垂れ死ぬことになろうが、帝国に売り飛ばすなり、湖に沈めるなり、アルドリック殿下の好きにしていいと言ったのは陛下と王太子殿下だ」 長い脚を組み、ユフが真顔で淡々と答えた。 「この砦と民を守るためセドリック殿との婚姻を承諾したが、サクは私のだ」 「そうですね、アルドリック殿下」 「おっしゃる通りです。心が広いですね殿下は」 クスリと笑うスフォルさんとゼオリクさん。 「飢えで苦しむ民のために帝国からの結納金をすべて教会に寄付しろ。これは命令だと。自分達の懐に入れるんでしょう、結局は。毎晩パ―ティーを開き贅沢三昧な暮らしをしているみたいですね。日照り続きで水も貴重になっているのに毎日水浴びをしているとか」 「聖女さまなら雨を降らせるなんて朝飯前なんじゃないですか?ニ年前にお亡くなりになった先代聖女さまは病に倒れてもなお、国の繁栄を祈り、民のために雨を降らせてくれと祈りを捧げ、怪我をした兵士の傷を治していたと聞きましたよ」 「ぜんぜん違いますね。サクさまとは雲泥の差です。本当に聖女さまなんですか?」 「馬車の前に飛び出した子どもに殴る蹴るの暴行を与えたとか。土下座して謝罪する子どもの母親にも暴行を加えたと。聖女さまは臣下を止めずに笑って見ていたという話です。妊娠していた母親はその後流産しました」 「そんなことがあったなんて知らなかった」 「情報が統制され、遮断されていますからね」 スフォルさんとゼオリクさんが、サクさまは悪くありませんよと優しく声をかけてくれた。

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