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第20話

アルさまもセドさまもどこにいてもよく目立つ。 あっという間に人だかりが出来てしまった。 「素敵なかたで良かったです」 ジルさんがほっとして胸を撫で下ろした。 「いきなり結婚だなんて聞いたときは驚きましたよ。愛されているんですね」 ジルさんの奥さんのサリ―さんも自分のことのように喜んでくれた。 「えっと、その……」 恥ずかしくて視線が宙を彷徨った。 「あ、そうだ。名前」 僕の腕の中ですやすやと眠る生まれたばかりの白い産着を着た赤ちゃんの顔を見つめた。 「――ティリ―オ……」 気付いたらその名前を口にしていた。まだ男の子か女の子か聞いていないのに。 「サクさまありがとうございます。なぜ分かったんですか?男の子だってまだ言ってないのに」 「さすがサクさまです。ティリ―オ。なんて素敵な名前なのかしら」 やんちゃでもいいから好き嫌いなくご飯をたくさん食べて大きくなるんだよ。パパとママを守ってね。健やかな成長を願いながらサリ―さんに赤ちゃんを返した。 「うわぁ―」 一斉に歓声が上がった。 「サクさま、七色の大きな虹がお城の上に掛かっています」 「サクさま、黄色い花がお空から降ってきました」 「あれれ、お花がお菓子になった」 子供たちが興奮していた。領民たちはサクさまが奇跡を起こされたと両手を合わせ涙を流していた。

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