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第23話

「領主さまとサクさまは俺たちのことをいつも思ってくれるし、気にかけてくれる優しいお方だ」 「仕事をしている手を止めてまで膝をついて挨拶しなくてもいいと仰ってくれた」 「領主さまもサクさまも泥だらけになりながら俺たちに手伝ってくれた。おかげで新しい井戸が出来た」 「私たちから領主さまとサクさまを奪おうとするなんてあんまりだ」 民衆が男たちをぐるりと取り囲んだ。 「王族の親衛隊なのに俺の顔を知らないとはな。何度か父の名代として国王に謁見したはずだが」 セドさまの言葉に男たちが狼狽えはじめた。 「王や王太子からの命令は絶対だからな。殺すのに失敗したら自決しろ、生き恥を晒すなと言われたんだろ?上司を選べないおまえたちがなんだか不憫に思えるよ」 「なぜ貴方さまがここに?」 「何も聞かされていないのか?サクの夫として、ここにいるのはごく自然なことだと思うが」 「夫?」 「だからさっき……」 男たちが驚いたように顔を上げた。そしてアルさまが言った言葉の意味を理解したとき、さぁ―っと血の気が引いた。 「逃げるな。卑怯者!」 セドさまが声を荒げた。

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