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第24話
その人の顔を見た瞬間、顔が恐怖に青ざめて手が震えて、声も出せなかった。
「やはり生きていたんですね、兄上……いえ、レオポルド第一王子」
尋常じゃない怯え方に、
「貴様か、召喚しておいて俺の妻を偽物を呼ばわりし、捕らえて牢屋に入れ、即刻処刑するように臣下に命じたのは。貴様も先代聖女の遺言を聞いたはずだ。なのになぜサクにやってもいない罪を被せ罪人として殺そうとしたんだ?」
セドさまが鬼の形相で睨み付けた。
「……俺は何も悪くない。俺の愛する二―ナをいじめたソイツが悪いんだ。それに俺から二―ナを奪っておいて、なにもかも、全部お前が悪い。コイツはヘルマプロディトスだ。国がこうなったのはコイツのせいだ。褒美をやる。捕らえよ。殺せ」
僕を指差し支離滅裂なことを喚き散らすレオポルドさま。
民衆は誰一人耳を貸すものはいなかった。
「なぜ無視するんだ?俺はこの国の第一王子だぞ。命令に従わぬもは容赦なく斬……ひぃ……
剣を振りかざそうとして呻き声をあげた。
僕の前にいたスフォルさんとクレイグさんがいつの間にかレオポルドさまの前後に移動していて、どこに隠し持っていたのか小型のナイフの刃先をスフォルさんは喉仏に、クレイグさんは首もとに突きつけていた。
「黙れ」
「耳障りだ」
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