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第26話
この日を境にアルさまは北の砦《ノ―ドフォルト》領主、グラシオ公爵を正式に名乗るようになった。王宮を出るときに臣籍降下する勅命を賜り、兄王子たちからはもう赤の他人だからと絶縁を一方的に宣言されていた。
殿下、殿下と慕ってくれる領民に申し訳無くて、なかなかグラシオ公爵を名乗れずにいたアルさま。ようやく踏ん切りがついたみたいだった。
「あ、あの、アルさま。非常に言いにくいことなのですが……」
セドさまが帰ったあと、アルさまに三十分ほど膝を貸してほしいと頼まれた。
アルさまは僕の膝にごろんと横になると静かに目を閉じた。
三十分が経過し、一時間が経過し、
「公務がたまりにたまっているんですよ。いい加減起きて下さい」
ユフがイライラし始めた。
「お疲れみたいですね」
「ようやくサクを独り占めすることが出来て安心したんだろうけど、頭を撫でろ、ぽんぽんしろって子どもかっての」
「アルさまはまだ十六歳です。僕からしたら子どもです」
「もう十六歳です。立派な大人です。甘やかすはどうかと思いますよ」
ユフの言っていることも一理ある。でもアルさまも僕と同じく親の愛情を知らないで育った。足の引っ張りい、権力闘争、いつ暗殺されるか分からないまさに生き地獄のような日々だった。だから僕といる時間はとても穏やかで、とても幸せだと話してくれた。だから守ろうと決めた。
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