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第30話

それから数日後アルさまはセドさまと一緒に首都に発たれた。自国の兵ではなく、大勢の帝国の兵に守られながら。 僕に出来ることは死の森を何事もなく無事に通過するようにただ祈ること。砦の一番高いところでうっそうと広がる森に向かい祈り続けた。 「サクさま、そろそろ日が落ちます」 「夜は冷えますからどうぞ中に入ってください」 スフォルさんとゼオリクに声を掛けられてすっかり夕方になっていることに気付いた。 「無事に森を通過することが出来たでしょうか?盗賊や魔物に襲われなかったでしょうか?子爵さまの手の者に待ち伏せされて襲われたりしなかったでしょうか?」 「殿下たちが森を通過するとき、昼間でも気味が悪いくらいに薄暗い森に突然日が差したそうです。一本の光の道が行き先を示してくれそうで道に迷うことなく森を出られたと殿下たちに随行している騎士たちが申してました」 「お二人が無事なら良かったです」 胸を撫で下ろした。 「セドリック殿下のあの慌てようをはじめて見ました」 「殿下もやはり人の子ですね」 スフォルさんとゼオリクがぷぷっと思い出し笑いをした。

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