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第31話

「皆さんにご飯を作らないと。すっかり忘れていました。お手伝いをお願いしてもいいですか?」 「いいですよ」 「勿論です」 「ありがとうございます」頭を下げた。 「なぜ貴方がここにいるんです?」 怪訝そうに目の前にいる眼鏡をかけた長身の若い男性を睨むスフィルさん。 「王室警備隊の隊長は皇太子殿下のお側にいなくていいんですか?」 「私だけのけ者とは。二人とも冷たくないですか?」 「私たちはセドリック殿下直属の騎士です」 あっ、あの人……。 うろ覚えだけどスフィルさんたちのお姉さんのご主人かな?観光船が沈没したとき船長や乗組員とともに最後の最後まで船に残り陣頭指揮をとっていた。船が沈没する直前にかろうじてボ―トで脱出することが出来た。新婚旅行だと話していたっけ。あの混乱した状況にもかかわらず彼は落ち着いていた。ただ者ではないと思っていたけどまさにその通りだった。 挨拶しようとしたら、 「サク妃殿下お初にお目にかかります。ジュリアン・グレーンスト―ンと申します。なんなりと申し付け下さい」 右足を後ろに引き、右手を体の横に添え、左手を横に水平に伸ばし、ボウ アンド スクレープと呼ばれる挨拶をされたから驚いた。 「義弟たちはサク妃殿下にご迷惑をお掛けしていませんか?」 「迷惑だなんて。その逆です」 慌てて首を横に振った。

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