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第32話
「サクさまはセドリック殿下が選んだ人。敬意を払うのは当然だろ?」
「サクさまが殿下に見合うだけの価値があるか、見極めに来たのだろう?」
「さぁ、どうかな」
ただならぬ雰囲気に扉を開けられずにいたら、
「入らないですか?」
ゼオリクさんに声を掛けられた。
「えっと、その……」
「せっかく淹れた紅茶が冷めてしまいますよ」
ワゴンを押しながらおっかなびっくり中に入ると、
「御飯がとても美味しかったと騎士たちがとても喜んでいました」
「ジュリアン・グレーンスト―ンさま。たいしたものを準備することが出来なくて申し訳ありません」
「そんなことはありませんよ。サクさまが丹精を込めて作ってくれた心尽くしの手料理、私も食べたかったです。明日の朝のご飯が今から楽しみです。サクさま、私のことはどうぞジュリアンとお呼び下さい」
「そう言われましても……」
チラッとゼオリクさんを見ると、
「戸惑うのも無理はありませんが、サクさまは殿下の后になったのです。私たちはサクさまより年上ですが、臣下です。慣れていただかないと」
にっこりと微笑んだ。
「遅くにごめんなさいね。サクさま、あたしらで何かお手伝いすることはあるかい?」
町に残ってくれた女性たちが訪ねてきた。
鍛冶屋のピエ―ルさんの妻のマリーさんに、よろずやのカ―タ―さんの妻のエマさんに、飲み屋を切り盛りするアグネスさんとジョリーさん姉妹だ。女性たちの代表として来てくれた。
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