43 / 83
第43話
「あの忌々しいヘルマプロディトスか。偽者の癖に。アレをすぐに儂の前に連れてこい!罪人の分際で聖女を騙るなど甚だしい」
「お言葉を返すようですが、ここにはアレという人はいません。名前で呼んでいただけますか?」
「この儂に指図するのか!」
クリュエル子爵が声を荒げてジャグを叩きつけた。
「ジョバンさま、飲み過ぎですわ」
「もうそのくらいにしてくださいませ。怖がってますわ」
女性がクリュエル子爵に水だと言って何かを飲ませた。さっきまで高圧的な態度で散々喚き散らしていたのに、ものの数分でストンと眠ってしまった。
女性たちはユフとジュリアンさんに最初から狙いを定めていた。
椅子から立ち上がると、二人に歩み寄った。
「ペリエにはいないタイプのいい男だわ」
「わたくしたちの相手をしなさい。これは命令よ」
蠱惑的な眼差しで二人を見上げ、しなだれるように寄り掛かると、豊満な胸元をわざと見せびらかして迫る女性たち。
「断ろうとは思わないでよ」
「次期宰相の妻の愛人になれるのよ。名誉なことでしょう」
濃い化粧ときつい香水の匂いに不快感を露にするユフとジュリアンさん。
ともだちにシェアしよう!

