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第44話

「気色悪いヘルマプロディトスよりあたくしたちのようが宜しくてよ」 「疫病神より満足させてあげるわ。寝所に案内しないさい」 「もちろん領主のね。だってジョバンさまはもうここの領主だもの。アルフレッド殿下は今頃ニ―ナの相手をさせられてるわよ」 女性たちがクスクスと笑った。 「……浅ましい」 「何か言った?」 「浅ましいと言ったんだ。聞こえなかったのか?元聖女候補のみなさん。とんだ厚顔ぶりだ」 ギクリとする女性たち。 「おぃ、動くな」 ジュリアンさんが従者をじろりと睨み付けると、背後から煌びやかな甲冑をつけた騎士たちが現れた。 「確か、クリュエルには妻が五人、妾が四人いたな。そのうちの四人か。出来の悪い倅より、悪知恵が働く連れ子のほうを可愛がり、従者として常に側におくとか」 「ジョバンさまのことを呼び捨てにして。何様のつもり?」 「俺か?そこにいる従者に聞いてみたらいい。俺も彼に聞きたいことと言いたいことが山のようにある」 ジュリアンさんは怖いくらいに落ち着いていた。 「ちょっとあんたたち」 「黙って聞いていれば調子に乗って」 怒り心頭の様子でマリーさんたちがクリュエル子爵の妻たちを取り囲んだ。 「サクさまの何を知ってんのよ」 「あたしらのサクさまを馬鹿にするのも大概にしなさいよ」 「あんたちのほうがよっぽど疫病神よ。大勢で押し掛けてきて。サクさまとユフさまを困らせるんじゃないわよ」 あまりの迫力に圧倒されて思わず後ずさる妻たち。

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