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第47話
「気色悪い疫病神の癖に、帝国のセドリックをたらしこむとはな。たいしたものだ」
強いちからで上顎を掴まれ、無理矢理顔を上げさせられた。
「こうして見ると、なかなか可愛い顔をしている」
「気色悪いのはあなたのほうです」
みんなを守れるのは僕しかいない。恐いなんて言ってられない。クリュエル子爵を睨み付けた。
「その汚ならしい手をサクさまからすぐに退かせ。さもなければ容赦はしない」
剣の先をクリュエル子爵の首に突きつけたのはスフィルさんだった。
「勘違いだ。儂は……そうだ。妻たちと従者を探していたんだ」
すっとクリュエル子爵の指が離れていった。
「離しただろう」
「ではなぜ懐に手を忍ばせているんだ?もしもサクさまに傷一つつけてみろ。エリオット殿下が黙っていないぞ」
「こんな辺鄙な所に、しかも敵地にいるわけ……」
はっとするクリュエル子爵。
「子爵殿が寝ているときに、子爵殿が連れてきた妻妾四人が、こともあろうかエリオット殿下とユフを色仕掛けで籠絡しようとしました。持ち物を調べると見るからに怪しげな薬が見つかりました。エリオット殿下とユフに薬物を飲ませ、意のままに操る魂胆だったのでしょうがそうは問屋は卸しませんよ」
スフィルさんがクリュエル子爵をじろりと睨み付けた。
「あ、でも、わが帝国と戦争がしたいなら別に止めないが」
「貴様らみたいな軟弱な青二才に儂らが負けるわけがないだろう」
クリュエル子爵が護身用のナイフを取り出した。
エリオット殿下は確かセドさまのお兄さまだ。何がどうなっているの?ジュリアンさんはジュリアンさんじゃないってこと?パニックになっていた。
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