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第49話

西の空が茜色に染まるころ、クリュエル子爵らを乗せた馬車が王都に向けてひっそりと出立した。来るときは大勢の騎士に厳重に守られていたのに。同行するのは数人の王宮警備隊のみで、とても寂しいものだった。クリュエル子爵に忠誠を誓っていた騎士たちはみな子爵に反旗を翻し、ここに残る決意をした。 「夜の森はとても危険なのに……」 「あのまま居座り続ければ領民の怒りを買うだけですから致し方ありません」 「サクさま、夜は冷えます。中に入りましょう」 スフィルさんとゼオリクさんに促され、エリオット殿下が待つ応接間へと向かった。 扉の前まで来たとき、ガチガチに緊張して手が震えていた。 「知らなかったこととはいえ失礼なことをしていなかったでしょうか?」 「大丈夫ですよ」 「そうですよ」 スフィルさんとゼオリクさんが重い扉をゆっくりと開けてくれた。 ユフと一緒に待っていたのはジュリアンさんじゃなくエリオット殿下と本物のジュリアンさんだった。ジュリアンさんは黒い甲冑姿で兜を脇に抱えていた。赤色の長い髪を後ろで一つにまとめていて、僕に気付くと恭しく頭を下げた。

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