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第50話

「だって私だけサクに会えないなんてずるいと思わない?気づいたらセドもスフォルもゼオリクもみ~んないなくなってて。蝶の観察から帰ってきたらジュリアンと黒の騎士団までがいなくなっていたんだ。私だけ置いてきぼりなんて酷すぎる。急いであとを追いかけたんだ」 「蝶の観察ですか?」 「私は花を育てたり蝶を観察したり、本を読むのが好きなんだ。最近は薬草に興味があってね」 「公務より、三度の飯より、ですよね?」 ジュリアンさんが静かに口を開いた。 「うん。そう。だから変人ってよく言われている。私は皇帝には向かない。私よりセドのほうが向いている。でも最初に生まれた子が次期皇帝と法律で決められているから……」 そこで言葉を濁らすエリオット殿下。 「殿下は皇籍から離れ、セドリック殿下に皇太子の座を渡そうとしたのですが、当のセドリック殿下 も皇籍を離れ、アルフレッド殿下と奥さまと三人でこの北の砦で暮らしたいと仰られましてね。そうなると皇帝陛下の跡を継ぐお方がいなくる」 「エリオット殿下さまはイクス王国からお妃さまを迎えられたと聞きましたが」 「護衛の従者と懇ろな仲になっていて、妊娠していることが判明したんです。イクス王国に丁重に送り返しました」 「そうだったんですね。知らなかったです」 「表向きは移動中に流行り病にかかりそのまま命を落とされたということになっていますので知らなくて当然ですよ」 ジュリアンさんが淡々と答えた。

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