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第51話
「どうですか、実際サクさまにお会いして」
「セドから聞いていたより何倍も可愛い子だね」
「駄目ですよ。好きになっては」
「分かってるよ」
「本当に分かっていらっしゃいますか?エリオット殿下の好みのタイプですからね、サクさまは」
「サクはセドの后だ。好きになる訳がないだろう。だからそう怖い顔をしないでくれるかな」
ジュリアンさんに突っ込まれ、タジタジになるエリオット殿下。
「義兄上はエリオット殿下より三歳年上で幼馴染みなんです。陛下より鍛え直してくれと教育係を仰せつかったのですが……」
「一度馬から落ちてそれ以降は馬に乗らず馬車で移動するようになりました。血を見るのが嫌、魔物と戦うのも嫌、剣の稽古はもっと嫌」
「義兄上を追いかけてよく馬に乗れたものです」
「苦手なものは誰にでもあります」
「それは分かりますが皇位継承第一位というご自分のお立場を考えてほしいんです」
スフィルさんとゼオリクさんが小さくため息をついた。
「セドリック殿下は皇籍を離れると決意したのはサクさまに会ったからです。自分が去ったあとエリオット殿下が苦労しないようにと魔物の数を半分に減らすことを目標に掲げ、エリオット殿下を補佐する人材の育成と、警護をするために黒の騎士団を新たに作られたんです」
「セドさまは、お兄さん想いなんですね」
「えぇ、そうですね」
「でも今はサクさましか見えていないようですよ」
スフォルさんとゼオリクさんがくすりと笑った。
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