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第54話

どたばたと走る足音が聞こえてきた。 「今夜はずいぶんと賑やかだな」 ドアが開いてスフィルさんが駆け込んできた。 「失礼します。ユフ殿大変です……エ、エリオット殿下、ここにいたんですか?義兄上が探していましたよ」 「側にいてくれと頼んだのに断られたから……それはそうと何事だ?」 「クリュエル子爵の手の者が戻ってきて騒ぎを起こすかもしれないから、寝ずの番でパトロールをしなければならないと義兄上はそう言いませんでしたか?」 「さぁ、どうだったかな」 「都合が悪くなるとすぐそうとぼけるんですから。夜陰に乗じてカ―ス・クリュエルの私兵がサウスイーストの村を襲撃しました」 「サウスイーストの村?」 「ミラー湖に面する人口が200人にも満たない名もなき小さな村です。クリュエル子爵がかつて村人を虐殺し、その証拠を消すために村を焼き払い地図から村の名前を消しました。生き残った者たちが身を寄せ合い助け合いながら生活をしています。七割が高齢者です。とても貧しい村です。セドリック殿下のお陰でメイソン村から定期的に医者が来てくれるようになりました。メイソン村からここに物資を運ぶ中継点になっているんです」 「だから狙われたのか?」 「はい」ユフが頷いた。

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