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第55話

「まんまと罠に引っ掛かったようだ」 「エリオット殿下どういうことですか?」 「実はクリュエルを警護していてここに残った騎士たちからこれ以上の愚行を止めてくれと泣いて頼まれたんだ。半信半疑ではあったが村人を避難させるために急遽帝国軍を村に派遣したんだ事後報告になってしまい申し訳ない。急を要することだったから」 「そうだったんですね」 「間に合って良かった」 「エリオット殿下、村人を助けていただき感謝します」 「私はなにもしていない。サクに褒めてもらえればそれでいいから」 エリオット殿下の手が僕の手をそっと包み込んだ。 「どさくさに紛れて何をされているんです?」 スフィルさんがエリオット殿下を睨み付けた。 「なにもしていない」 「しているではありませんか。その手を……」 不気味な地鳴りとともにウォォォ――ッと魔物の雄叫びが聞こえてきた。 「地震か」 ぐらっと横に大きく揺れて、すぐに揺れが止んだ。 「ユフ、スフィルさん、町が心配です。様子を見に行きましょう。エリオット殿下はここにいてください」 「一人はやだ。私も行く」 「行ってどうするんですか?足手まといになるだけですよ。俺たち黒の騎士団が殿下をお守りしますので、サクさまの言うことを聞いてください」 セドリクさんが一歩前に出た。 「魔物は怖い。でもいつかは乗り越えなければならない」 「それならサクさまから手を離してください」 慌てて手を離すエリオット殿下。

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