57 / 83

第57話

「人や魔物を従わせる首輪ってありますか?」 「相当な魔力の持ち主なら、従属の首輪を使えるかも知れないが、これは禁止されている行為だ。人にも魔物にも使えるからね」 「そう。理に反しているからね。帝国では法律で持ち込みも使用も禁止されている」 「そうなんですね」 ジュリアンさんとスフィルさんが剣を構えた。 「待ってください。この子は操られているだけです。だから斬らないで下さい」 空耳かも知れないけど助けを呼ぶ声が聞こえてきた。僕にはこれを解除できるくらい強い魔力はない。ただ祈ることしか出来ない。地面に膝をつき、手を合わせ目を閉じて祈り続けた。 すると、ぱぁ―っとまぶしい光に魔物が一瞬で包まれて。黒くて大きい魔物がだんだんと小さくなり最後は黒い犬に変わった。 思い出した。そうだ、アルさまのお兄さんのレオポルド殿下も首輪をつけられていたんだっけ。襟を立てて、髪が長かったから分かりにくかったけど。首輪を外そうとしてもなかなか外すことが出来なくて。かなり手こずったとユフから聞いた。 レオポルド殿下はそのあと正気を取り戻したけれど、姉さんと結婚式を挙げた日から僕たちを襲ったあの日までの記憶を失っていた。姉さんと離婚したことやアルさまとセドさまを襲ったことを教えられ顔面蒼白になった。死んだことになっているからもし生きていることが姉さんやクリュエル子爵側にバレたら今度こそ殺される。だから帝国がレオポルド殿下を保護した。 「この首輪……」 ジュリアンさんとスフィルさんも気付いたみたいだった。 「下手に触らないほうがいい。ザンサーを随行させておいて良かった」 ザンサーとはレオポルド殿下の首輪を外した帝国最強と呼ばれる魔導師のことだ。ジュリアンさんの幼馴染みらしい。あまり表に出ないからその存在を知る者は少ない。

ともだちにシェアしよう!