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第58話
「ザンサ―はいるか?」
「はぁ~~い。ここにいます!」
ジュリアンさんが呼ぶと一人の男性が前に出てきた。その男性に見覚えがあった。怪我をした村人の治療にあたっていた人だ。僕は医者じゃないけど、このくらいなら、まぁ、なんとかなるかな。すぐ治るよ。と明るく言っていた人だ。
「初めましてザンザ―と申します。セドリックの奥方に会えて嬉しいです。魔導師に見えないって?みんなに言われます。サク、宜しくね」
握手を求められおずおずと応じると、嬉しそうにぶんぶんと手を振られた。
「あの朴念仁のセドリックが法律を変え、婚約をすっ飛ばし、まさかいきなり結婚するとは。どんな人だろうって思っていたけど、セドリックにはもったいないくらい素敵な人だね。エリオットが悔しがるのも分かる」
ハハハと豪快に笑う男性。
「あなたなら王妃殿下とも馬が合う。可愛がってもらえますよ。陛下もあなたに会いたがっていますよ」
「こんな僕を歓迎してもえるなんて嬉しいです」
「こんな僕を、でなく、サクはセドリックの奥方ですよ。もっと自信を持ってください。さてと、ジュリアンが怒り出す前にさっさと片付けるか」
ザンザ―さんが片膝を立てて、首輪に両手をかざした。
「サクは癒しの力でみなを幸せにしてくれる。でもミ―ナは悪魔と契約してまで聖女の力を欲した。地位と名誉、王族並みの贅沢な暮らし、男たちに傅かれて色欲に溺れる日々。負の感情が強すぎて国を豊かにするどころか荒廃させた。サクとは真逆だ。サクは常に領民に寄り添い、困った人がいれれば敵味方関係なく手を差しのべてくれる。ミ―ナにもサクみたく人を気遣う優しさが少しでもあればまた違ったことになっていたかもね」
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