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第61話

向かい風をもろともせず疾走するスフィルさんの白毛の愛馬。名前は特にないと言われ、頭にぱっと浮かんだステイという名前をつけた。 ゼオリクさんの薄墨毛の愛馬にはラニという名前をつけた。 黒い雲が急に空を覆い、瑠璃色に輝くドラゴン……帝国ではドラゴンとは呼ばず飛竜と呼んでいるみたい。 がゆっくりとその姿を現した。 その直後、え?嘘……。 アルさまとセドさまが突如として姿を現したから心臓が止まるんじゃないか、そのくらい驚いた。 「あとで説明する」 「サクが無事で良かった」 セドさまとアルさまが剣を抜き構えると、魔物が一斉に襲いかかってきた。 スフィルさんも馬上で剣を振るい次から次に襲ってくる魔物をやっつけた。 まだまだ剣の鍛練が足りないとユフに言われているアルさま。はじめて対峙する魔物に手と足が震える。セドさまだけでなく助太刀にゼオリクさんも駆け付けてくれた。 「何事も実戦あるのみだ。ゼオリク、アルフレットを頼んだ」 「御意」 双刀使いのゼオリクさんが剣を両手で構えた。 「これじゃあキリがないな」 斬っても斬っても次から次に魔物たちが地面からうじゃうじゃと這い出て来て襲いかかってくる。 戦っているジュリアンさんや騎士たちを守るために僕に出来ることといったら祈ることのみ。 魔物たちが怒りをおさめて戻ってくれるように目を閉じてひたすら祈り続けた。 「サクさま」 スフィルさんに名前を呼ばれ目を開けると、あれほどいた魔物たちがまばゆい光に包まれてすっ―と消えていった。残されたのは無数の数の首輪と、魔物に姿を変えられた全裸の若い男性たちが血を流して何人もバタバタと倒れていた。 「見ないほうがいい」 剣をしまったスフィルさんが手で顔を隠してくれた。

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