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第62話

「セドリック殿下、恐れながら申し上げます」 一人の騎士が前へ進み出た。 「どうした?」 「この者たちは警ら中に忽然と姿を消した国境警備騎士団の騎士たちです。彼は私の従兄弟です。間違いありません」 セドさまとジュリアンさんの表情が険しくなった。 「ジュリアン、この者たちの治療を最優先にしてくれ。何があったか聞くのはそれからだ」 「分かりました」 ジュリアンさんが恭しく頭を下げた。 「サク、城に戻ろう」 セドさまがにっこりと微笑んだ。 「サクが無事で良かった」 アルさまもほっとして胸を撫で下ろした。 「あの、セドさま……」 おっかなびっくり声を掛けた。 「どうした?」 「エリオット殿下がいらっしゃることをご存じですか?」 「兄さんが?」 驚いたように目を見張ると、なんで教えてくれなかったんだと言わんばかりにジュリアンさんを睨み付けた。 「忘れていました。すみません」 悪びれる素振りを見せずしれっとして答えるジュリアンさん。 「ザンザーは知っていたのか?」 「いえ、知りません」 「見えすいた嘘をついて。兄さんはサクに会いたがっていた。それを知らない訳がないだろう」 「セドリック殿下、サクさまはお疲れでございます。休ませてあげて下さい」 「話しを逸らすな」 「逸らしてはいませんよ」 ジュリアンさんがにっこりと笑んだ。 「サク、私と一緒に帰ろう」 馬から下りたアルさまがにっこりと微笑んで右手を差し出した。 「サク、夫である俺と一緒に帰ろう」 アルさまも馬から下りると満面の笑みを浮かべて左手を差し出した。 どうしよう。選べない。 ほとほと困り果てて、スフィルさんに助けを求めた。

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