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第63話
「セドリック殿下、グラシオ公爵、ステイがサクさまを取られたと怒りますよ。ステイは気難しい性格ですがサクさまには心を許しています。ステイの機嫌が悪くなる前に城に帰りましょう」
スフィルさんの言葉が分かるのかステイがゆっくりと歩きだした。
「お帰り、我が可愛い弟。随分と早かったね。グラシオ公爵ともっとゆっくりしてくれば良かったのに」
「嫌味ですか?」
「嫌味じゃないよ」
「そうとしか聞こえないのは気のせいですか?」
「うん、気のせいだよ。セド、ハグしてあげるからおいで」
満面の笑みを浮かべ両手を広げるエリオット殿下。
「兄さん、いつも言ってますが俺はもう子どもではありません。それに砂埃まみれですよ」
「私にとったらセドはまだまだ子どもだよ。砂埃まみれでも、汗まみれでも私は気にしないよ」
「兄さんは良くても俺が嫌なんです。いくつだと思っているんですか、俺は……」
セドさまをぎゅっと抱き締めるエリオット殿下。
「あの……聞いてます?」
「聞いてるよ。ミーナの色香に惑わされ、魅了の魔法に囚われてしまわないか心配だった」
「厚塗りの化粧の匂いと、甘ったるい香水の匂いがキツすぎて俺は嫌悪感しかなかった。アルなんかミ―ナに迫られて顔をひきつらせて完全に固まっていましたよ」
エリオット殿下の腕のなかでププッと思い出し笑いをするセドさま。
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