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第68話

圧倒的な軍事力を持つイギア帝国とイクス王国に攻めこまれ即位してわずか数日で降伏した国王陛下。飢えと生活苦に喘ぐ国民をよそに贅沢三昧な暮らしをしていた王室の金庫は空っぽで、戦うだけの金も騎士もなにもかも足りなかった。 国王陛下はこの混乱に乗じて兄夫婦をひそかに暗殺し、妻のミ―ナを犯人に仕立てて牢屋に閉じ込めてしまった。見目麗しい男たちを常に侍らせてこの世の春を謳歌していた聖女ミーナ。夫を手のひらで踊らせているつもりが、実際はその逆だった。 うだつが上がらない気の弱い男を演じるからとアルさまに口止めをお願いした陛下は、愛した人を死に追いやった兄夫婦とミーナに虎視眈々と復讐するチャンスを伺っていたのだった。 「セドさま、これからどうなるんですか?」 「我が国が欲しいのはここノ―ドフォルトだけだ。イクス王国もかつて水の都と謳われた美しいペレイの町が短期間のうちにすっかり変わり果てた姿を見て愕然としていた」 セドさまの腕が腰にまわってきて。後ろからそっと静かに抱き締められた。 「帝国の属国になり国の名前だけは残すか、イクス王国に滅ぼされ国もろともなくなるか、決めるのは叔父上自身だ」 今度はアルさまに前からぎゅっと抱き締められた。朝から休まず仕事をしていた二人。しばしの癒しタイムが欲しいとねだられ、無下に断るわけにもいかず。五分だけと約束した。

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