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第69話

「五分だけ。今まで二人が素直に約束を守ったためしはない。サク、早めに逃げないと一生ベットから出れなくなるぞ」 ユフの声がうしろから聞こえてきたからびっくりした。いつからそこにいたんだろう。ぜんぜん気付かなかった。 たとえ相手が十歳年上でも、帝国の第2皇子でも一切容赦がないユフ。 「血も涙もないのかきみは」 「血も涙もありますよ」 「可愛げがないと嫁の貰い手がないぞ」 「アルさまとサクに一生この命を預けた身ですから結婚には興味がありません」 「好いてくれる人はいるだろ?」 「それってもしかしてエリオット殿下のことですか?分相応です。俺に未来のイギア帝国皇帝の王妃は務まりません。男ですし、世継ぎは産めません。サクがこれから産む子どもたちの面倒をみるのが俺の夢です。男の子なら一人前の騎士に育て上げる。それだけは譲れません」 「ユフ、兄さんは皇帝になる気はさらさらないよ」 「俺もエリオット殿下の妻になる気はさらさらありません。五分後、呼びに来ます」 軽く会釈して部屋をでていくユフ。 「アル、どうしたらいい?」 「私に聞かないで下さい」 首もとに顔を埋めると嬉しそうにスリスリするアルさま。くすぐったくて我慢できなくて身を捩ると、 「ズルいぞ」 セドさまも首もとに顔を近付けてきて。何度もキスをされた。

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