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第70話
招かざる来客が約束もなしに突然やってきたのはそれから数分後のことだった。
「クチュリエルみたく魔獣に餌として食わせてやろうかとも考えたのだがあんな女でも一応聖女だったわけだし、何よりも今をときめくセドリック殿下の愛后 の姉だし、最後くらい会わせてやろうかなと。なんて優しい男なんだろうな、私は。兄とは違いこう見えても慈悲深い方だからな」
「ご自分で言いますか?」
長い足を組みソファーに深く腰を下ろしてふんずり返るのはアルさまの叔父上で姉の何番目かの夫だった前国王・ルシアン陛下だった。
国外追放が決まり、亡母の生家がある他国に渡る途中に立ち寄ったみたいだった。
「しかしまぁ、罪人がすごい出世だよね。どうやってアルフレッドだけでなく、セドリック殿下にも取り入ったのか、是非とも聞きたいね」
「そんなことを聞くためにわざわざ来たんですか?」
「そのために護衛の騎士たちを不眠不休で砂漠を走らせたんですか?」
スフィルさんとゼオリクさんが剣に手を置き客人をじろりと睨み付けた。
「この者たちは?」
「サクの専属護衛騎士です。たとえ叔父上でもサクに指一本触れようとするなら彼らは容赦はしません」
「国賊の癖に」
不適な笑みを浮かべるルシアン陛下。
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