73 / 83

第73話

まるで何かに弾かれたように顔を上げる姉さん。 「アイツを殺して!アイツは実の姉を殺そうとしているろくでなしなの!晴天続きであなただってアイツを憎んでいるはずよ!」 顔を振り乱し狂ったように湖面に向かって叫んだ。 「だからさ―、余計なことをしないでくれる?」 丸い石に腰かけて欠伸をしていたザンザ―さんがため息をついた。 「人使いが荒いよ。昨夜からずっと働き詰めで、休ませる優しさくらいないの?」 「別についてこいとは言ってない」 セドさまが答えると、 「陛下からサクを宜しくって頼まれているから」 「じゃあ、黙って仕事をしてくれ」 しょうがないな、めんどくさいな、と口では言いつつも、 「竜王はきみの言いなりにはならないよ。大人しく落ちてくれないかな」 姉さんがスフィルさんとゼオリクさんを振り切り僕のところへ来ようとした。でも、 「さっきなんて言った?同じことを何度も言わせないでくれるかな?セドリック殿下とグラシオ公爵をこれ以上怒らせないで欲しいんだけど」 ザンザ―さんが姉さんの前に立ちふさがった。その目の色が金色に変わった。 「嘘でしょう……」 姉さんが信じられないという表情になり膝から崩れ落ちた。

ともだちにシェアしよう!