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第74話
「ザンザ―の祖先はミラー湖一帯を治めていた竜族だ。当時のクレイグ王国の国王が豊富な水資源と類いまれなる才能を持つ竜族に嫉妬し姑息な手で騙して一族郎党を皆殺しにしミラー湖に亡骸を遺棄した。ザンザ―の祖先はたまたま偶然帝国に滞在中で難を逃れた」
「ザンザ―さんってもしかしてメイソン村があるウィーヴェンの領主さまの親戚になっていますか?」
「すごいね~~サク。さすが~~」
パチパチと手を叩くザンザ―さん。
「兄がきみに宜しくって」
「確か愚弟が迷惑ばかりかけてすまないって言ってたな」
「迷惑は掛けてないよ。多分だけど。サクが来てくれて晴れの日が多くなって、サウスフィールドにも幸せの雪が降るようになった。いいこと尽くめだ」
「アルサま、セドさま。どうしよう」
思わず二人の服を掴んだ。
「だから言ってろ?無事にメイソン村を通過できればいいなって」
「サクが心配することではないよ。歴史は勝者が作るもの。だからすべてが真実とも限らない。実は私もここに来るまでは知らなかった。教えてくれた領民たちに感謝している」
「ギャあ~~!来ないで!」
姉さんの悲鳴が突如として響いた。
黒い手のようなものが次から次に水面から伸びてきて姉さんの体をあっという間に捕まえると湖のなかに引きずり込もうとしていた。
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