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第75話

「朔也助けて!姉さんが間違っていた。まさかだとだと思うけどたった一人の肉親である私を見殺しになんかしないわよね?助けてくれるわよね?」 猫なで声で懇願された。 「世迷い言だ。惑わされるな」 「アルの言う通りだ。耳を貸してはいけない」 アルさまが僕の耳を手で塞いだ。 セドさまが僕の目を手で覆った。 「人でなし!あのときトドメを刺しておけばよかった。あんたなんて生きる価値無し。紙屑同然。疫病神。離しなさいよ。私はこの国の聖女で王妃よ」 わめき散らして必死に抵抗するけど力の差は歴然。あっという間に湖のなかに引きずり込まれていった。 「王妃殿下はまだ会ってもいない息子の嫁と、もう一人の息子を迎えるためにせっせと準備を進めているんだよね。楽しみを奪わないで欲しいんだよね。やっと静かになった」 「強引すぎないか?」 「プライドがやたらと高いからね。素直に従うわけがないよ」 ザンザ―さんが目を閉じ呪文を唱えた。 「ザンザ―さんは姉に呪いを掛けているんですか?」 「竜王の怒りを沈める呪文だ。気に病むことではない」 「罪を償いまっとうに生きれば竜王さまもいつか彼女を許してくれるはすだ」 アルさまとセドさまの顔を見上げるとにっこりと微笑んでくれた。 こんなにもあっけない幕切れになるとは誰が予想しただろうか。最後の最後まで姉とちゃんと話せなかった。後悔ばかりが残った。 だからせめても姉がもといた世界に無事に戻れますように。更生して今度こそ幸せになりますようにと心から願った。ミラー湖をあとにすると整然と並ぶ騎士の一団が僕たちを待っていた。

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