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第76話

ザンザ―さんが先頭にいた男性をチラッと見ると慌ててフ―ドを頭に被った。 その男性はウィーヴェンの領主さまで、ザンザ―さんのお兄さんだ。 「アルフレッド殿下、グラシオ閣下、ご無事でなによりです」 恭しくボウ・アンド・スクレープの挨拶をすると遠くまでよく通る太い声が響いた。 「わざわざ来てくれたのか」 「御身に何かあっては遅すぎますから。サクさまもご無事で良かった。領民たちがサクさまのことを心配しておりました。それに愚弟がご迷惑をお掛けしたようで申し訳ありません」 深々と頭を下げられたから驚いた。 「いえウィーヴェン辺境伯さま。ザンザ―さんはなにも迷惑を掛けていません。ですので頭を上げてください」 慌てて首を横に振った。 「サクさまはお優しい方だ。ザンザ―久し振りに会ったのに。挨拶もなしか?」 「愚弟のことを心配するだけ無駄でしょう」 「相変わらずだなお前は」 やれやれとため息まじりに苦笑いを浮かべるウィーヴェン辺境伯さま。 私はもう逃げない。王族としての責務を全うする。レオポルドさまが荒廃したペレイへと戻られたのはそれから数日後のことだった。死んだはずのレオポルドさまが現れたものだから領民たちは天地が引っくり返るくらい驚いた。セドさまの父親であるイギア帝国の皇帝陛下の温情でペレイの土地を領地として与えられ一代限りの伯爵となったレオポルドさま。前途多難だが兄を慕う領民のために荒れ果ててしまったペレイをなんがなんでも復興させるだろう。見栄とプライドだけは高い人だから。そんなことをアルさまが話していた。

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