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第78話
「サクが困っているだろう。私がダリル・ウォーター三世だ。妻の名前は……」
顎髭が生えた女性と同じ五十歳くらいの男性がにこやかに微笑んだ。
「クララよ。あなたがグラシオ公爵ね」
「はい。そうです」
緊張した面持ちのアルサま。
「ユフはあなたの従者よね?」
「はい。なぜユフのことをご存知なんですか?」
質問に質問で返すアルサま。
「だってエリオットが好きな子でしょう。十歳くらい年下って聞いてるけど、なかなかしっかりしているって。エリオットのお嫁さんに来てくれるとすごくいいんだけど」
「ユフは男です。ですので跡取りは……」
「跡取りはサクのお腹の中にいるでしょう?あれ?まだだった?」
顔を真っ赤にするアルサまとセドさま。
「でもね来年には未来の皇帝が産まれるような予感がするわ」
「母上、気が早いです」
「私の予感が外れたことはないわ。今から準備しておかないとね」
ルンルン気分のクララさま……じゃなくてお義母さん。仲の悪い嫁姑より親子みたいに仲のいい嫁姑のほうがいいんじゃない?終始ご機嫌の様子だった。
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