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第85話
「観光船転覆事故のときサクさまに助けていただいた子です。名前はシアーズです」
事故の時生後半年と話していた。あれから一年。あーうーと喋るようになり、よちよちと歩けるようになっていてビックリした。
「こんなに大きくなったんですね」
「水のなかから引き上げれた時すでに虫の息で体が冷たくなっていたこの子をサクさまは優しく抱き締めてくれました。感謝しても感謝しきれません」
「僕は当然のことをしたまでです」
「サクさまさえ良ければ息子を抱っこしてもらえませんか?サクさまに名前をつけていただいた赤ん坊は大きな病気も怪我もせずすくすくと元気に育っていると聞きました。ですからこの子にミドルネームをつけてもらいたいんです」
「構いませんがミドルネームは先祖の名前とかですよね?僕が名付けて大丈夫なんですか?」
「聖女の加護を是非ともいただきたい」
ジュリアンさんが優しく微笑んだ。
「こんばんはシアーズさま。抱っこしてもよろしいですか?」
腰を屈めておっかなびっくり両手を差し出した。知らない人だもの。人見知りして嫌だってギャン泣きされるかと思ったけど。にっこりと微笑むとシアーズさまのほうから飛び込んできた。
「あら、珍しい」
「初対面の人に抱っこをされると暴れて大泣きするのに」
「シアーズは覚えているのね、サクさまは命の恩人ですもの」
「あ、あの、サクでいいです。年下ですし、呼び捨てで。ジュリアンさんと同じように呼んで下さい」
「そういう訳にはいかないわ」
「シャロン、サクがそう言ってるんだ」
「分かったわ」
ジュリアンさんに言われ最後はシャロンさんが折れた。
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