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第88話
「サクには内緒にしてくれ。余計な心配をかけたくない」
「サクが焼きもちを妬くか確かめるいいチャンスなのに」
ふふっと愉しげに笑うアルさま。
「サクさまをお守りしろ!」
「門を閉じろ!」
スフィルさんとゼオリクさんが騎士団に命じ剣を構えた。
さっきまで雲ひとつない快晴だったのに。黒い雲がむくむくと急速に集まってきて、無数の魔物が空から突如として降ってきたのはつい五分前のことだ。
「サク、こっちだ」
ジュリアンさんに屋敷の中に入るように促された。
「ジュリアンさんはご家族をお守りください」
「きみに万が一のことがあったら陛下と皇后殿下と殿下たちに顔向けが出来ない」
「僕は大丈夫です」
手をかざすと白い小さな竜がパッと姿を現した。
「ミラー湖の飛竜はセドさまとアルさまと同じで心配症で過保護なんです。この子がいるからついてこなくても大丈夫ですと言ったんですけど……」
鈍色の空を仰ぐと飛竜が悠然と泳いでいた。その大きな口を開けウォーと雄叫びをあげると魔物たちの動きが一斉にとまった。
「サク、飛竜を止めてくれ。火を吹かれたら大変なことになる」
「彼の吹く火は魔物に向けて吹く炎です。人や建物には影響がありません。あ、そうだ。心に魔を宿している人もとザンザーさんが話していました。もし万が一のときはこの子が火を消してくれます」
白い竜がふわりと浮いてくるっと一回転した。
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