90 / 96
第90話
「……もしかしてクチュリエル子爵さまのお嬢さまですか?」
一瞬ギクッとする女性。
「そ、そんな訳ないでしょう。あたくしはカドモス侯爵の娘よ。あなたみたいな下賤の者とは違うの。あたくしのほうがセドリック殿下に相応しいわ。セドリック殿下はあたくしのよ。だから……」
「黙れ」
怒気を孕んだ低い声が響いた。
「周知の事実だろう。今さらどうする。それはそうと聖女さま。これだけの騒ぎをまた起こしたんだ。どう責任を取るつもりだ聖女さま。また大司教に泣きつくのか?」
ジュリアンさんが女性を睨み付けた。
「う、うるさいわね」
女性が隠し持っていた小瓶を僕に向かって投げようとした。でも手から離れた瞬間、小瓶は一瞬で凍りつきそのまま地面に落ちて粉々に割れた。
「嘘でしょう。夏なのになんで?」
ハッとして顔を上げる女性。ふわふわと宙に浮かぶ小さな白い竜を見つけると鬼の形相で睨み付けた。
「みんなあたくしの邪魔ばっかして。憎たらしいったらありゃしないわ」
悔しさに歯軋りながら地団駄を踏む女性。また魔物が空から降ってきた。
「サクさまご無事ですか」
スフィルさんとゼオリクさんら黒の騎士団が駆けつけてくれて。魔物の群れと闘いはじめた。
白い竜が白い息をふぅーっと吐くと、半分近い魔物が一瞬で氷漬けになってしまった。
体は小さいけどその力はすごい。おとなの竜なみだ。煙が消えるように女性がいつのにかいなくなっていた。
ともだちにシェアしよう!

