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第97話

「ころころと表情が変わるから見ていて飽きない。話しが逸れてしまったな。実は先代皇帝の隠し子と名乗る男が現れて、大公位の地位と領地を要求しているんだ。彼の後ろ楯があのカドモス侯爵なんだ」 「ジュリアンさん、カドモス侯爵さまはどんな方なんですか?」 「ひと言でいうなら狡猾老獪な男だ」 こうかつ……ろうかい……どんな字を書くんだろう。どんな意味なんだろう。首をかしげると、 「サクには少し難しかったかな」 ジュリアンさんにクスッと笑われてしまった。 「クチュリエル卿みたいな男だと言ったほうが早かったな」 「ジュリアンさん、クチュリエル子爵がどうなったかご存じですか?死の森を抜けられず魔物の餌食になったと皆はそう言います。でも子爵だけなぜか遺体が見付からないんです。子爵を守っていた騎士団は数人の行方不明者はいるものの領地にぶじに戻ったものの死の森で何があったのか、そして子爵のことを聞かれると貝のようにかたく口を閉ざしてしまうとか」 「よほど怖い目に遭ったのかも知れない。注意すべきは魔物がクチュリエル卿の体を乗っ取り本人に成り代わったときが面倒だ一番だとザンザ―が言っていた」 「そんなことが出来るんですか?」 「魔物は人知の及ばない存在だ。なんでも出来る。心の弱みにつけこむのが上手い。劣等感、嫉妬、妬み辛み、そんな感情を持っている人の心の隙間に彼らは上手い具合に入り込んでくる」 僕たちを襲おうとしたあの女性の姿がふと目に浮かんだ。

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