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第107話
「セドリック殿下、お待ちしていました」
泥まみれの黒いキャソック(司祭平服)を着た若い男性がすっと前に出ると、
「それ以上近付くな」
ゼオリクさんが牽制するように立ち塞がった。
「彼は前の大司教の腹心だったが、新しい大司教とは折り合いが悪くて帝都から辺境の教会に異動になったんだ」
「そうだったんですね」
「セドリック殿下どうか助けてください!」
男性が突然その場に座り込んだ。額を地面に擦り付けながら平蜘蛛のように頭を下げ続けた。
ゼオリクさんが頭を上げろと声を掛けたけど、男性は固持した。
町のみんなが固唾を飲んでことの成り行きを見守っていた。
「雨がもう一ヶ月以上降り続いているんです。川は何度も氾濫し、病気が蔓延しています。死人が増える一方で生き残った民はみな領地から逃げ出しました。何度も皇帝陛下と大司教に嘆願書を送っているのですが」
「父の所に一度も嘆願書は届いていない。それに領主であるカドモス侯爵からも領地がそんな状況だということは一度もあがっていない」
「セドリック殿下は北の砦の領主さまですから、その……」
言葉を濁す神官の男。
「だからなにも知らないと言いたいのだろう?知った口を聞くな、そう言いたいのだろう」
「いえ、決してそういう訳では」
「ゲリ―、彼を頼む。話しを聞いてやってくれ」
「畏まりました。お任せください」
馬からおりたゲリ―さんが深々と頭を下げた。
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