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第113話

「神託を受けたカドモス侯爵の娘こそ真の聖女。セドリック殿下の正当な妃なのに。あぁ、なんとも悲しい。アトス神も嘆き悲しんでおられるというのに」 宮中を行き交う者たちに聞こえるようにわざと大きな声をあげると、大きなため息を何度もついた。 「偽聖女と怪文書をばらまかれ、聖女さまは深く傷付いておられます」 「アトス神の敬虔な信者であるクチュリエル子爵も見殺しにしたとか」 「恐ろしいことだ」 五人の神官たちが口々にそんなことを言い出した。 「サクさまは真夏に雪を降らせる奇跡を起こした。雪は貧しい者たちには食べ物に、日照りの土地には雨を降らせ、子どもたちにはお菓子に変わった。北の砦を人が住めぬ死の町に変えた張本人があなた方のおっしゃるアトス神の敬虔な信者とはなんとも皮肉なものだな」 ザンザ―さんの声が聞こえてきたから驚いた。 ザンザ―さんたち魔道士たちは、大司教さまたちに臆することなく堂々としていた。 「そのかの者の計略により国からの支援が全く届かず国からも見捨てられた北の砦の領主になったグラシオ閣下は十六歳とお若いのに領民のために、サクさまと身を粉にして尽くされた。その結果一年あまりで北の砦は劇的に変化したのに、かの者が再び北の砦の領主になる?領民たちを散々搾取しておいてさすがの飛竜もお怒りになるのも当然ではありませんか?サクさまが今度はどんな奇跡を起こされるか国民はみな楽しみにしているというのに。水を差さないでほしいですね」 「貴様、アトス神を愚弄する気か」 気色ばみ声を荒げる大神官の男。 「愚弄していませんよ。私も神に仕える身ですので」 ザンザ―さんがにこっと微笑んだ。

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