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第119話

「アルさま、おはようございます」 「うん、おはよう。葡萄を準備させたんだけど……」 「葡萄ですか?」 「うん。もしかして私たちとの約束を忘れたわけではないよね?もちろん覚えているよね?」 耳の痛いことを言われギクッとした。 「あれ?もしかして図星だった?サクは心のなかで思っていることがすぐに表情に出るからね。すごく分かりやすいんだ」 ププッと愉しそうに笑うアルさま。 「葡萄を食べさせるんですよね?」 「手じゃなく口でね。ちなみにこの葡萄は、土いじりが趣味な兄さんが天塩にかけて育ててくれた葡萄だから、くれぐれも粗相がないようにね」 セドさまの指がそっと唇に触れてきた。ドキマギして顔が真っ赤になった。 「ほら、口を開けて」 「あ~~んして」 葡萄を一粒指で摘み、悪戯っぽい笑みを浮かべる二人。すごく楽しそうだ。普段些細なことですぐに喧嘩になるのに。こういう時はなぜか息がぴったりになる二人。セドさまは口ではなんだかんだ言いながらも年の離れたアルさまに大概のことは譲ってくれる。 「アルさまが先でもいい?」 「たまには俺を先にしてほしいな」 セドさまに言われアルさまをチラッと見ると、 「今日だけだよ」 ムッとしながら答えた。 「ありがとうアル。サク、ほら」 口の中に葡萄をぽいっと入れられた。 あれ、でも、口移しってどうやってやるんだろう。うんうん悩んでいたら、セドさまに片手で抱き締められ口唇を合わせられ、口腔に滑り込んできた舌に言葉を封じられた。

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