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第125話
「何もかも人のせいにして。自分勝手で身勝手な人だね」
「アルさまも聞こえたんですか?」
「うん、聞こえたよ。子は親を選べないからね。可哀相な人だと同情はするけど、だからといって妻がいるセドを自分のものだと主張して、私とセドの妻であるサクを敵視することはちょっと違うような気がする。本物の聖女なら民を苦しめたり、ましてや危険な目に遇わせたりしないはずだ」
「アルの言う通りだ」
セドさまが僕たちのところに戻ってきた。
「騎士のみなさんは?」
「目が痛い。呼吸がしづらい。息が詰まる感じがする。頭がズキズキして痛いと訴えていたが、建物の中に避難したら、だいぶよくなったみたいだ」
「良かった」
ホッとして胸を撫で下ろした。
「カドモス侯爵と教会から聖女だから妃に迎えてほしいと何度も懇願されたようだけど、兄上は俺も弟も女性に興味はない。弟には結婚したばかりの妻がいると丁重に断ったと聞いているんだけどね」
セドさまが困惑の表情を浮かべながら軽くため息をついた。
『ねぇ朔也、助けてよ』
助けを求める姉さんの声がどこからか聞こえてきたような気がして。ドキッとして立ち止まった。
「サク?」
「どうした?」
怪訝そうな表情を浮かべる二人。
「空耳だと思うんですが、姉さんの声が聞こえてきたような気がしたんです」
「え?サクも?」
「アルさまもセドさまも聞こえたんですか?」
「もしかしたらこの霧は、私たちに幻覚を見せる霧なのかもしれないね」
「二人は頭がズキズキしないのか?よく平気でいられるな」
「私は大丈夫です。サクは?」
「僕も大丈夫……」
その時キーンと耳鳴りがして。思わず両手で耳を塞いだ。
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