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第128話
「霧が晴れますようにとサクちゃんが祈ってくれたお陰よ。ありがとう」
「僕はなにもしていません」
「謙遜しなくてもいいわよ。ほら、外を見てご覧なさい」
お義母様に言われて外を見ると、いつの間にか霧が晴れていて。静かに雨が降っていた。鈍色の空を眺めていたら、山のような書類と格闘するユフさんの顔が脳裏にふと浮かんできた。
「北の砦が恋しくなった?」
「こんなに長い間離れたことがないので」
「それもそうだね。ユフのことだ、恨み辛みを言いながらも書類の山と格闘しているはずだ。冬ごもりの準備もしないといけないし、結婚式が終わったらすぐに帰ろう」
「やらないといけないことが山積みだからな」
「もう帰ってしまうの。サクちゃんだけでも残れないの?」
お義母様が寂しそうにそう口にした。
「母上、俺たちは新婚なんですよ」
「分かってますよ。サクちゃんとせっかく仲良くなれたのに。もっとお茶会がしたかったわ」
「冬が開けたらユフが嫁いで来ます」
「そうよね。ユフさんを口説きおとすようにエリには頑張ってもらわないと。息子がもう一人増えるなんて、なんて幸せなのかしら。夢のようだわ」
お義母様がニコニコと笑ってパチンと手を叩いた。
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