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発情②

 マリウスはエミーユを抱え上げるとベッドに向かった。  目が見えない上に、ひどく焦っているために、ところどころ足をぶつけている。しかし、エミーユのことだけはどこにもぶつけないように、その腕にすっぽりと抱きかかえている。  ベッドにエミーユを下ろすと、マリウスはジャケットを脱ぎ始めた。ボタンを外す手が興奮に震えている。  エミーユはもう思考することを手放していた。ただマリウスしか見えていない。 「マリウス……」  エミーユは体を起こすとマリウスを吸い込まれるような目で見た。  マリウスの前に立ち、胸に肩にキスを落とす。その目はうっとりとマリウスを見つめている。世界にマリウスしかいないような顔つきだった。  そして、マリウスを見つめながら裸になった。  巻頭衣とズボンだけのエミーユと違ってマリウスは脱ぐのに時間がかかっている。  マリウスがやっとズボンを足首から抜いたところで、エミーユは立ったままのマリウスの前にしゃがみこんだ。  マリウスの陰茎をエミーユはもう何度も見たはずだったが、そのときそれはまるで違うものだった。マリウスのものは大きく高く屹立している。  エミーユは誘われるように陰茎に顔を寄せた。舌で舐め上げ、口に含む。 「エ、エミーユ……! だ、だめ……!」  何が起きたのかわかったマリウスは、恥ずかしがって腰を後ろに引いた。エミーユはそれを追いかけて、マリウスの先端にキスした。そして、舌で、包み込む。 「うぅっ、だめ、エミーユ……っ」 「マリウス…………」 「あっ……!」  マリウスが小さく叫ぶと同時に、マリウスからこぼれ出るものがあった。エミーユの口にどくどくと吐き出される熱い体液。 (マリウス、可愛い人……)  庇護欲と情欲はとても近い場所にあった。そして、それは完全に両立した。  エミーユにとってマリウスは、可愛くて、守りたくて、そして、愛おしい相手となった。  口に広がるそれをエミーユは一滴でもこぼすのが惜しかった。エミーユはそれをごくりと飲み干す。 「エミーユ……」  マリウスはエミーユの喉の鳴る音を聞いて、エミーユに手を伸ばして立ち上がらせると、ベッドに横たえようとしてきた。  エミーユはその手を制して、マリウスをベッドに座らせ、自分はその前に立つ。 (マリウスが欲しい)  エミーユはマリウスの首根を引き寄せた。  マリウスと唇を重ね合わせる。チュ、チュ、と湿った水音が満ちる。  マリウスの陰茎は再び立ち上がっている。  エミーユはその行為が初めてで、誰からも教わることもなかった。けれども、その方法を知っていた。  エミーユはマリウスにまたがり、屹立を自分の孔に当てた。  マリウスはじっとしていた。マリウスも初めてに違いなかった。  自分から動けばエミーユを傷つけてしまうとで思っているのか、エミーユになされるままにしていた。  マリウスの屹立が滑ってエミーユの孔をこすりあげる。 「はぁっ……」  エミーユはその感触に声を上げた。  マリウスはそれを聞いて、たまらないようにマリウスの孔に手を這わせた。孔を指でなぞる。 「うっ、ふう………」  撫でるうちにマリウスの指は孔に吸い込まれるように内へともぐりこんだ。 「あっ……マリウス……」  マリウスの指がエミーユの中で動く。中をひっかかれてエミーユからは粘性のある液体があふれてきた。 「ああっ…………、マリウス、あなたが欲しい……」  エミーユはマリウスにしがみついた。もうエミーユの準備は整っている。 「あなたのを私の中に……」  エミーユは孔をマリウスの陰茎に当てた。そして、腰を下ろしながら、マリウスの陰茎を飲み込んでいく。  飲み込んだところで、じっとしていたマリウスが、突き上げた。 「ああっ」  エミーユはマリウスの一突きで、果てた。ガクガクと体を震わせて後ろに倒れそうになるエミーユをマリウスは支えると、つながったまま、ベッドに寝かせた。  そして、律動を始める。  「マリウス……」  エミーユは下からマリウスにしがみついてくる。 「うっ、くっ……。エミーユ……」  マリウスは凄まじい快楽に包まれ、奥歯を噛みしめた。エミーユの中は熱く、マリウスをぎゅっと包み込む。 「あ、ああっ、あっ、マリウス……」  エミーユはマリウスをきつく締め付け、そして、腰を揺らめかせた。 「あっ、エミーユ………」  マリウスは果てた。エミーユはマリウスのもので自分の体内がいっぱいになるのを感じ、この上ない満足感に襲われる。 「マリウス……っ」  エミーユは、マリウスの首に掻きつき、その唇に唇を寄せた。チュッ、と音を立てて、マリウスの唇を吸う。  唇が外れるとエミーユは呆けた顔でつぶやいた。 「マリウス……、私の、私のマリウス……」  愛おしげな目でマリウスを見つめてくるエミーユ。  マリウスのものはエミーユの中でまたもや硬度を増した。 「エミーユ……」  マリウスはエミーユの中で何度も果てた。  情交は深夜まで続いた。

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