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発情③

 ところどころ穴の開いた屋根から木漏れ日のように陽光が差し込んでいる。  柔らかい光を受けながら、エミーユは多幸感に包まれていた。  心と体が奥深いところで満たされている。渇いていたところに水を与えられたようだ。 (幸せだ………)  涙が浮かんでくる。  胸に大切なものを抱いている。手触りの良い赤毛。燃えるような赤毛を慈しんで撫でている。 (マリウス。可愛い……。私に現れた可愛い甘えん坊……。愛おしい人……)  エミーユはずっと赤毛を撫で続けた。  昨夜のことを思い出していた。マリウスの息遣い、肌に残る感触、体内に与えられたマリウスの精。  胸を締め付けられるほどの甘やかな感覚に包まれる。  陽光の中で、幸せがしたたり落ちては満ちていく。 (え……?)  不意にエミーユの全身がこわばった。  赤毛を捉え直す。  エミーユの腕の中に、すやすやと寝息を立てているマリウスがいた。 (ああ、なんてことだ……!)  甘やかさが、罪悪感に塗り替えられる。 (マリウスを私の発情に巻き込んでしまった)  発情はまだ先のはずだった。なのになぜか起きてしまった。  獣人と過ごしているせいで周期が狂ってしまったのか。  上半身を起こそうとすれば、ぐいっと引き寄せられてしまった。マリウスの腕に体が捕らえられている。  マリウスは甘えるような仕草で、エミーユの胸に頭を摺り寄せてきた。  柔らかな赤毛がエミーユの肌をくすぐる。  エミーユの目からまた涙が零れ落ちた。 (マリウス……! 可愛いマリウス……!)  マリウスは覚醒すると、エミーユをぎゅっと抱きしめてきた。エミーユの胸から顔を上げて言った。 「おはよう! エミーユ!」  マリウスはエミーユの顔に触れると唇を重ねてきた。マリウスの舌がエミーユに入ってくる。昨晩のうちに何度も感じたマリウスの熱い舌。 (あっ……)  エミーユの背中に甘いしびれが走る。  マリウスがエミーユの肌をなぶってきた。  エミーユの胸の突起がマリウスの親指の腹でこすられる。突起はすぐに熱を帯びて芯が硬くなる。 「んっ……んふぅ……」  エミーユは快感を拾い上げて声を上げた。マリウスは突起に唇を寄せてきた。突起を舌先でもてあそぶ。 「ん、あっ……」  昨晩の間に、エミーユの体は変えられてしまった。マリウスになぶられて悦ぶ体になったことを自覚する。  力強く抱くマリウスの腕。  今やエミーユにとってマリウスは可愛いだけではない、力強く自分を抱く雄だ。エミーユの腰が快楽に揺れる。  その腰をマリウスは掴んだ。エミーユの足はマリウスを受け入れるように開き、マリウスのものが侵入してきた。  すでにエミーユの孔はマリウスの屹立に馴染み、すんなりと受け入れる。  入ってしまえば逃さないように締め付ける。 「あっ、はあっ」 「エミーユ、おれをこんなにしめつけて……、かわいい……、あなたは、俺のものだ……」  エミーユの腕も足もマリウスを離さまいとその背に絡みついた。全身でマリウスを求めている。  マリウスが中を突けばエミーユの背中がしなる。 「あっ……」 「エミーユ、おれ、う……」  エミーユは自分の腹がマリウスのもので満たされるのを感じた。マリウスはエミーユの中で果てると、何度もエミーユに口づけする。さも愛おしいものにするように頬を撫でて、頭にも頬にも唇を落とす。  その手はもうエミーユがマリウスの所有物であるかのように遠慮なくエミーユの体をまさぐっている。尻を撫で、胸の突起をつまんで、体の至る所に唇を落とす。  無邪気にあふれんばかりの愛情表現を示してくる。  エミーユは大きな動物にじゃれつかれているようだった。 「おれ、エミーユを幸せにする! ぜったい、ぜったい、幸せにするから!」  マリウスの顔は喜びに満ちている。  その顔を見るエミーユの顔が凍り付いていく。 「マリウス、私の発情に付き合わせてすまなかった……」 「おれ、すごく幸せだ! エミーユ、俺、すごく幸せなんだ………!」  マリウスはエミーユに頬を摺り寄せる。そんなマリウスにエミーユは低い声を出した。 「予定が一日伸びたけど、今日、町に行く」 「えっ?」  マリウスは虚を突かれたような顔をしていた。

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