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第12話

 こいつと会ってからそう思うのは何度目か。  カイトの顔をじっと見ながら心の内を読み取ろうとする。 「二人はどうして同居してるの?」  カイトも探るように俺を見ている。  恋人同士――そう言いたいのは山々だが、それは詩雨さんが望まないだろう。そうすると、説明がしづらい。 「俺の従兄弟が詩雨さんの友人で、詩雨さんのことは昔から知っている」 「ふうん。それで?」 「……」  これ以上説明の仕様がない。 (もうちょい、頭働かせろよ、俺っ) 「まあ……いいや」 (いいんかーい)  どうやら興味をなくしたようで内心ほっとする。 「詩雨ちゃんが大学の卒制で撮った写真、あれ、キミだよね? 顔は写ってないけど。『ハル』の写真集見た時わかった」  そんなことまで知っていることに驚く。ますますストーカーっぽい。 「詩雨ちゃんがカンナ交響楽団(シンフォニー)の公演でウィーンに来ていた時、よく空いた時間に写真を撮って誰かに送っていたけど、それもキミ?」 「いや違う」  ――その相手とは、詩雨さんが子どもの頃からずっと想っていた男、(たちばな)冬馬(とうま)だ。 (嫌なことを思い出させる)  今の詩雨さんの気持ちは俺にあると断言できる。  でもそれまでの詩雨さんの気持ちを一人占めしていた橘冬馬には、未だに嫉妬を感じている。 「あ、違うんだ? なんとなくあの被写体が、その相手だと感じたんだけど」  それはたぶんきっと、あの時詩雨さんが、彼と重ねながら俺を撮ったからだろう。 「ところで――ハルくん?」 「なに?」 「男同士の恋愛ってどう思う?」 「え?」 「気持ち悪いかなー」 (それを、今正に詩雨さんと恋愛中の俺に訊くことか)  いや、彼は知らないで言っているんだろうが……。 (ほんとに? ほんとに知らずに言っているのか?)  即答できずにいたが、カイトのほうも答えを待っていなかった。 「あ、そろそろ支度しなきゃ。御馳走様でした」  そう言って手を合わせると席を立った。俺をもやもやの渦の中に放り込んで。爽やかな笑顔を残して去っていった。 (めちゃめちゃ嫌な予感がする)  俺は心を落ち着かせる為に詩雨さんの優しい味のするスープを啜った。 * * 「はあ……」  俺は桜宮(さくらのみや)モデルエージェンシーの社長室に座り、大きな溜息を()いた。それから、ぺしょっとテーブルに突っ伏す。  事務所のモデルが社長室でこんなことをしていたら大目玉だろうが、社長である桜宮夏生(なつき)は俺の従兄弟なので、今は特別扱いして頂きたい。 「どうしたー? ハルー? お疲れか?」  夏生が入ってきて呆れ混じりに言う。 「や……詩雨さん不足」  顔も上げずぐったりと答える。 「ん? ああ、例の。まだ家にいるんだ?」

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