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第16話

 なのに。 「オレ……遙人にちょっと話が」 (今、それを言うか……っ)  それがどんな話なのかわかってしまい、自分の内の何処かでぷちっと音を立てて何かが切れる。 「……あいつと……カイトと、行くのか……」 「え? なに?」 (言わせない)  避けるように掴んでいた両の手首を引っ張ってぐっと引き寄せ、その唇を塞いだ。  今その口から出ようとする言葉が二度と発せられないように、すべて飲み込んでしまいたい。  噛みつくような激しい口づけ、割れ目を無理矢理こじあけ、舌を絡めとる。 「ん……っあ」  喉の奥で聞こえる声は何を言っているのかわからない。  息も()かせないくらいに貪りながら身体を反転させ、詩雨さんを壁側に追い込む。ぐっと身体を密着させて俺の身体と壁で閉じ込めた。  反撃を食らわないよう掴んだ両手を頭の上で壁に縫い止める。片膝で彼の股ぐらを割ると、その身体はびくんっと震えた。  俺の肉体(からだ)の中心がもう熱くなっていることを感じたのだろう。  俺は漸く唇を解放してやる気になった。 「ハ、ル、話聞いて」  間近で見れば、ライトのぼんやりした灯りでも詩雨さんの表情がわかる。非難めいた顔。そして、その唇から非難めいた声が零れる。  俺はそれに答えない。  細い肩に顔を埋め歯を立てる。 「つ……」  かなり強く噛んだ。詩雨さんが呻き声を漏らす。  ──初めてのセックスは、そう、半ば無理矢理だった。今と同じように左右の首を噛みついたところから始まった。最初は拒絶されたが、最終的には俺を受け入れくれた。恋人同士のセックスでもたまに噛むことがあるが、それでも甘噛み程度だ。  もう怖い思いはさせない。そう決めた。  なのに。  今の俺は。  その時と同じくらい、いや、それ以上に怖い思いをさせている。  それでも、俺は、止められない。  二度三度と噛み嘗め上げると血の味がした。  いつもはなるべく優しく愛撫する、詩雨さんのもっとも弱い部分、項を下から上へと激しく攻め立てる。強く吸い上げ、紅い痕を隙間なく散らしてゆく。 「ハル、やめっ、海がいるからっ」 「あいつの名前なんか、呼ぶな……っ」  両手を解放する。が、直ぐ様なんの取っ掛かりもない後ろ髪を引っ張って上を向かせ、再び口を塞ぐ。 『やめろ』と言っているが、その肉体(からだ)はもう変化の兆しが見えていた。  ルームウェアの裾から直に腹に触れ撫で回すと、それだけで肌が粟立つ。腹から背中に回し、指先で背筋を(なぞ)る。 「んっ」  喉の奥が鳴った。  焦らすようにあちこちに触れ、漸く女のものとは違う小さな胸の突起に辿り着いた。は、まだ触れてもいないのに、ぴんと立ち上がっていた。   

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