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第19話

 彼がそう言うのも最もだろう。  だからと言って止めたりはしないが。 「無理っ」  もう一度ぐっと力を入れると少しだけ進んだ。 「く……っ」  目の前の顔が苦痛に歪む。  酷いことをしていると思う。それと同じくらいに興奮もしている。  そこへ。  トントンと傍らのドアを遠慮がちにノックする音が聞こえた。  詩雨さんの身体が強ばった。さすがの俺も息を飲む。 「……詩雨ちゃん? 起きてる?」 「…………」  もちろん俺も詩雨さんも答えられない。  相手はもう一度ノックする。今度は少し強めだ。 「こんな時間にごめんね。でも……なんか、様子がおかしいような気がして……」 「海……んあっ!」  そっちに気を取られて詩雨さんの身体の力が少しだけ緩んだ瞬間、俺は一気に突き上げた。 「あぁっいつぅぅ!」  それでも入ったのは半分で、二度三度と詩雨さんの背中を壁に叩きつけるように突き上げる。 「詩雨ちゃん? 詩雨ちゃん、大丈夫?」  壁の振動が伝わりでもしたのだろう。カイトの声が焦るような色を帯びる。 「聞こえちゃったかな。まあ、俺は聞こえてもいいけど。見せてやってもいい。詩雨さんが、俺にされてること」  根元まで突き入れたまま、内緒話のように耳許で囁く。 「ハルぅ」  涙声。その目は俺を非難している。 「なんてね。鍵かかってるから」  詩雨さんの一番気持ちイイ場所に当てると、腕の中の肉体(からだ)が変化し始める。 「あぁ……んはぁ……」  漏れる吐息にも艶が帯びる。目を閉じて眉間に皺を寄せ、押し寄せる快感に耐えているようだ。   (やっと、落ちてきた)  それに気を良くした俺は、今度はゆっくりと体内を堪能した。擦るように俺自身をゆるゆると行き来させ、腰を使ってぐりぐりと回す。 「ハル……やぁ……ぁぁぁ」  その『嫌』はもう弱々しくて甘い吐息混じり。吐き出して萎えたそこも芯を持ち始める。 「やめていいの? 詩雨さん、また勃ってきたよ。気持ちイイよね?」 「ちがっ、やめ……っ…ムリ……だから……」  もう譫言のようだ。  暫く続いていたノックと声も、詩雨さんの耳には届いていないのだろう。  カイトも諦めてしまったのか、それもいつしか途絶えた。 「詩雨さん。俺、限界。イクよ」  一旦入口まで引き抜くと、一気に奥まで突き上げた。 「あ、あぁぁぁぁっっ」  その口から今度こそ矯正が飛び出した。 「ハル……あついっ」  内で俺の熱い迸りを感じたんだろう。  そして、俺の腹も詩雨さんが放ったものでしとどに濡れた。 * *  目覚めは最悪だった。  頭は痛いし、身体は怠い。  しかし、それ以上に酷い気分だ。  後悔と満足感が鬩ぎ合い、自分が分裂してしまいそうな程だ。いっそ分裂出来れば却って楽というものだ。

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