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第11話

 ルドヴィックの瞳に宿る情欲は、先ほどよりもずっと強くなっていた。  その情欲につられるように、俺の心臓の音がどんどん早くなる。  ルドヴィックから視線を逸らしたいのに、逸らせない。 「……ノアム、いっぱい出したね」  笑ったルドヴィックが小さく舌を出す。真っ赤な舌の上にある白濁に視線が惹きつけられてしまう。  俺がじっと見つめているのに気づいて、ルドヴィックは笑って、大きく音を立てて嚥下した。  そして、唇をぺろりと舌でなめる。 「気持ちよかった?」  ルドヴィックの手のひらが、また熱を持ち始めた俺の中心部に触れた。 「また硬くなってきた。……さっき出したのに、元気だね」  竿の部分をするりと撫でて、ルドヴィックが俺の耳元に唇を寄せた。  軽く息を吹きかけ、耳朶を甘く噛んだ。 「んっ」 「耳、感じるんだ」  至近距離から聞こえる声に、身体が反応する。  なんか、変。俺、すごく変になってる。 「ノアム、身体ひっくり返すね」  でも、次のルドヴィックの言葉に驚く。目を見開いている間に、ルドヴィックは軽々と俺の身体をひっくり返した。  腰の部分を持って、尻だけを上げるような体勢を作る。 「ルドヴィック……?」  恐る恐る振り返ると、ルドヴィックが自身のスラックスのポケットから、小瓶を取り出す。  蓋を開けて、中の液体を手に垂らした。  透明でねっとりとした液体。嫌な予感がした。 「や、ルドヴィック、まさか――」  逃げようとする俺の身体を、ルドヴィックががっちりつかむ。 「逃げないで。……抵抗するなら縛るって言ったよね?」  ぴしゃりと告げられ、俺の身体の動きが止まった。 「そう、いい子。……ほぐすから、ちょっと力抜いてね」 「――ぁっ」  液体をまとったルドヴィックの指が、後孔に触れた。  指がぐぐっと押し込まれていく。 「やだ、待って――」  せめて覚悟を決めるまで待ってほしい。  首をぶんぶんと横に振るのに、ルドヴィックの指は容赦なく体内を刺激する。  気持ちよくないはずなのに、腸壁をこすられるたびに甘い吐息が漏れた。 「ぁ、あっ、やぁ」  脚が震える。身体がびくびくしている。  なんか、腹の中熱くなってきたかも……。 「指、増やすからがんばって」  二本目の指をねじ込まれた。  狭い孔の中で二本の指が動き回る。こじ開けるようにナカをかき回されて、陰茎の先端からだらだらと先走りがあふれた。 (はじめてなのに! なんで後ろで感じてるんだ……!?)  それとも、これがBLゲームの世界の常識なのか。  わからないけど、小さな快感が生まれてくる。そして、快感は俺の中でじんわりと広がっていく。 「ナカきゅんきゅんしてる。……気持ちいいんだ」 「ちが、ちがっ!」 「嘘言わないで。こっちも反応してるのに」  もう片方の手で、俺の肉棒をルドヴィックが握った。 「両方刺激するから、いつでもイっていいよ」 「ぁ、それはっ――!」  そんなのダメだ。絶対におかしくなるから――! 「やだ、やだやだっ!」  逃れようともがいた。けど、ルドヴィックの指が奥のとある一点に触れたとき――身体に強い快楽が走る。  頭の中がスパークして、真っ白になる。気づけば、陰茎から白濁がこぼれていた。 「あれ、イっちゃった?」  意地悪く言われると、恥ずかしくてたまらない。 「ナカで簡単にイけるんだね。可愛い。抱かれるために生まれてきたみたい」  ……そんなの、言わないでほしい。 「ここに俺が突っ込んであげるからね。ほかのやつには触らせないから」  ルドヴィックの手のひらが、優しく尻を撫でてくる。  苦しくてつらいのに、身体は反応する。快楽を求めるように、ナカがぎゅうっと締まった。 「……ノアム、泣いてるの?」  突然のルドヴィックの言葉に驚いた。 (泣いてるわけ――)  シーツに水滴が落ちた。  視界がゆがむ。水滴が頬を伝う。 「ひぐっ」  どうして俺は泣いているんだろうか。  ルドヴィックに手ひどく扱われたのがショックなのだろうか? (だって俺、一時期の処理の相手だろ……? ルドヴィックには、リュリュがいるじゃん)  どうせ最後には手ひどく捨てられるのだ。期待してはいけないのに。  ルドヴィックの気持ちが俺にあったらいいなって。ありもしないことを考えて、期待して。一人勝手に、現実との差に打ちひしがれているのだ。

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