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序章 /5
デューイと同様身長も一九〇と長身で、王に命じられ向かった戦場で幾度となく剣を振るい、負け知らずの戦のおかげで手に入れた引き締まった肉体美。長い睫毛にすっと通った鼻筋で薄い唇は整っているし、肩までの濡れたような緩やかに波打つ漆黒の髪も魅力的だ。右頬から顎にかけて先の戦いで負傷した深い傷はあるものの、それが余計に男の色香を放っている。侯爵というたしかな地位を持っているという申し分ないおまけつき。その証拠に、異性であっても同性であっても熱い視線を投げかけられている。知らないのは本人だけだ。
問題なのは、ヒースが過去に受けた執拗なほどの裏切りにより生まれた他者への警戒心だ。
しかしながら、どうやらヒースを訊ねてやって来た男は単なる召使いというわけでもなさそうだ。堅苦しい話し方はまるで上級貴族や、あるいは王族の従者のような口調だった。
「ヒース・マクブレイン卿、とある方の命令でやって参りました。今すぐメイフィールド国へお越しください」
二人は顔を見合わせた。
「とある方とは誰だ。おれにどういう用件でメイフィールドへ赴けと?」
すべてにおいて怪しい。ヒースは眉根を潜めたまま、フード男に訊ねた。ところが男には余程の機密事項を託されているのか、すべてを打ち明けることは難しいらしく、隣にいるデューイの存在が気になったらしい。
「あの、貴方様は?」
フード男が訊ねた。
「デューイ・コッカー。おれの腐れ縁だ」
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