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第1話 /08

 エマリーに隙を与えたのはエマリー本人ではなく、盗賊でもなかった。エマリーが懸命に守り続けていた少女が木の根に引っかかり、態勢を崩したのだ。  チュニックの袖が引っ張られ、エマリーも体勢を崩してしまった。 「無様だな、お国の剣士様よお!! 俺の勝ちだ!」 「エマリー様!」  マニオンが駆けつける姿が盗賊がいる少し先に見えたが、きっと間に合わないだろうとエマリーは目を閉じ、死を覚悟した。 「兵士さまっ!!」  エマリーの背後で少女が悲鳴を上げる。  盗賊の刃が振り下ろされるのと同時だった。突然、刃は鋭い音を立てた。宙を舞い、後ろへと弾かれるとそのまま大地に深く突き刺さった。 「無様だな、盗賊ごときが。おれの勝ちだ」 (――え?)  エマリーに向けて放たれた盗賊の言葉をそのまま吐き捨てるように言った彼はいったい何者だろうか。  みぞおちの奥底に響く低音はエマリーが聞いたことのない声だった。恐る恐る顔を上げると、そこには自分よりもずっと背の高い騎士が立っていた。漆黒の短髪に漆黒の鎧に身を包んだ彼は盗賊の喉元に切っ先を突きつけている。  盗賊はエマリーを相手にしていた、ついさっきまであった余裕は消えている。代わりにあるのは青ざめた表情だ。 「武器を捨てて降伏しろ」  騎士が静かに口を開く。 「だ、誰が!!」  盗賊にも面子というものがある。況してや頭領ともなれば当然だ。切っ先を喉元に突きつけられても屈さなかった。

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